A 平成11年7月に施行された「食料・農業・農村基本法」(「新基本法」)第32条「自然循環機能の維持増進」において「国は、農業の自然循環機能の維持増進を図るため、
農業及び肥料の適正な使用の確保、家畜排せつ物等の有効利用による地力増進その他必要な施策を講ずるものとする」としている。
これを受けて、平成11年11月に「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」(「家畜排せつ物法」)、「肥料取締法の一部を改正する法律」(「改正肥料取締法」)、
「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」(「持続農業法」)を施行し、これを「環境三法」という。
「改正肥料取締法」は、堆肥等特殊肥料の品質表示制度を創設し、堆肥等の品質たる肥料成分を正しく表示することにより畜産農家以外での家畜排せつ物の有効利用の推進を
目的としている。また、「持続農業法」は、堆肥等を活用した土づくりと化学肥料・農薬の使用の低減を一体的に行う持続性の高い農業生産方式の普及・浸透を目的としている。
A 「新基本法」に基づき、自然循環機能の維持増進を図りながら畜産業の健全な発展を目的として制定された。
家畜排せつ物は、農作物や飼料作物の生産に利用されてきたが、畜産経営の大規模化や省力化を背景にその利用が困難になりつつある一方、地域の生活環境に問題も生じている。
そこで、「家畜排せつ物の管理の適正化のための措置」及び「家畜排せつ物の利用の促進」を骨子とした「家畜排せつ物法」が制定された。
A 「管理」とは、家畜排せつ物を「処理」又は「保管」する行為をいう。
具体的には、家畜排せつ物の「処理」とは、たい肥の原材料としての加工、乾燥処理施設における乾燥、固液分離、水分調整等幅広い行為を含むものである。
「保管」とは、家畜排せつ物に加工を加えることなく保っておく事をいう。
「利用の促進」とは、家畜排せつ物をたい肥等の原材料として自ら一層利用する事、又は、 たい肥等として第三者に一層利用されるような状態にする事をいう。
A 家畜排せつ物法は、家畜排せつ物の管理を巡り、畜産業を営む者と地域住民との間で問題が生じている状況にかんがみ、野積み、
素掘り等の家畜排せつ物の不適切な管理を防止・改善し、地域における安定的な畜産経営の確保を目指すこととしていることから、特に家畜排せつ物の管理の
主体である畜産業を営む者を対象としている。
一方耕種農家やたい肥センターについては、家畜排せつ物を排出する者でないこと、家畜排せつ物を畜産業を営む者から入手しても肥料として利用するか販売することから、
家畜排せつ物の不適切な管理が生じ問題を引き起こすおそれは少ないと考えられ、「家畜排せつ物法」の対象としていない。
なお、畜産業を営む者には、畜産系大学、農業高等学校等学校教育法に基づく学校、サービス、愛玩用の目的で飼養している競走馬のトレーニングセンター、乗馬クラブ等は含まれない。
A 政令では、飼養動向、排せつ物の発生量、問題の発生状況等から馬が指定されているので、対象畜種は、牛、豚、鶏及び馬の4畜種である。
A たい肥が畜産業を営む者の管理下にある場合は、「家畜排せつ物」として取り扱う。家畜排せつ物である 「ふん尿」が堆肥化の過程で形状が変化していくある時点をとらえて「家畜排せつ物」か「たい肥」であるかを判断することは恣意的になるおそれがある為としている。
A 施設の管理基準の具体的な内容は、次の通りである。
A 管理方法の基準の具体的な内容は、次のとおりである。
<解説>家畜排せつ物の管理の方法として、構造設備に関する基準に適合した管理施設において家畜排せつ物を管理すべきことをまずもって明確にしたものである。
<解説>構造設備の基準を満たした管理施設を整備したとしても、その管理施設に破損がある場合、管理施設内で管理されている家畜排せつ物が飛散・流出し、 適切な管理ができなくなるおそれがあることから、これを未然に防止する為、定期的な点検を行う必要があることを示したものである。 なお、点検の頻度や方法については、具体的に示されていないが、これは管理施設の構造(コンクリートかシートか等)や種類(堆肥舎か浄化処理施設か、フロントローダーを使用しており 床面に破損の生じる可能性が高いかどうか等)等により点検の間隔や方法も自ずと異なると考えられることを踏まえたものであるが、一般的には点検については外見上の破損がないかどうか について1 年に1 回程度行うことが望ましいと考えられる。
<解説>管理施設に破損が生じた場合、管理施設内で管理されている家畜排せつ物が飛散・流出し、適正な管理ができなくなるおそれがあることから、遅滞なく補修を行う必要がある ことを示したものである。
<解説>管理施設に送風装置や攪拌装置等が設置されている場合、当該装置が故障等により稼働しなくなると家畜排せつ物の処理が滞り、その結果、不適切な管理を 誘発するおそれがあることから、装置の維持管理を適切に行う必要がある。具体的には、機械部分への注油、ホコリの除去等の日常の維持管理を適切に行うことが必要と考えられる。
<解説>家畜排せつ物を適正に管理するには、排せつ物の発生量や利用量を的確に把握しておく必要があるが、畜産業を営む者においては、これまで、このような記録がとられているとは 言い難く、これが野積み・素掘りといった不適切な管理の一因と考えられる。この為、家畜排せつ物の発生量、農地施用等自ら利用している量、耕種農家等に譲渡している量、 焼却・浄化処理等で廃棄している量について、年間の記録をとることにより、家畜排せつ物の管理について把握することが重要である。記録の実施に当たっては、家畜排せつ物の 発生量等は飼料の給与量等により異なるため、正確に把握することは難しい面があると考えられる。この為、簡便な方法で記録できるよう様式が定められているところである。
A 畜産局畜産経営課長名の通知で様式を定めているが、畜産業を営む者が独自の様式を使用しても良いことになっている。
定める様式は、畜種別に下記のリンク先を参照。
A 「管理基準」は、飼養規模が小さな畜産農家については、適用されない。
頭羽数規模が、牛、馬は、10頭以上、豚は、100頭以上、鶏は、2000羽以上の畜産農家は、適用される。
この頭数未満では、適用されないが、畜産の環境問題は、畜産の持続的発展に欠かせないことから、野積み、素掘りの状況であれば改善することが肝要である。
下表に畜種別構造設計基準と管理の方法基準について示す。
A 飼養頭数については、ある特定の時期を基準として決めると云うことではない。対象頭数を超えている時点で不適切な管理が行われている場合、
管理基準に合うよう改善する必要がある。
子畜については排せつ物量が少ないこと等から、頭数のカウントの対象外としている。牛、馬では、6ヶ月未満、豚では3ヶ月未満、鶏では2日令未満のものが除かれる。
なお、肉用繁殖経営については、出荷されることが確実と見込まれる子牛については、10ヶ月令未満のものを子畜と扱っても良いことになっている。
また、乳用種育成経営については、大規模化が進展しており、家畜排せつ物の適正な管理を確保することから、飼養されている育成牛(6ヶ月未満ものを含む)の実頭数に
1/3を乗じて得た数をもってその経営の飼養頭数として扱うことになっているので、この換算した頭数が10頭以上である経営は、「管理基準」が適用される。
A 家畜排せつ物法は、平成11年11月1日から施行され、「管理基準」についても、同日から施行されましたが、施設整備に一定の期間が必要である等を考慮し、
管理基準のうちの構造設備に関する基準については、平成16年10月30日までの5年間の猶予期間を設けている。
猶予期間経過後も、いきなり罰則ではなく、まず指導・助言を行い、さらに必要であれば勧告、命令という手順をとることになっている。
なお、命令に違反した場合には、50万円以下の罰金に処せられるほか、報告や虚偽報告、立ち入り検査の拒否・忌避等の違反行為は、20万円以下の罰金に処せられる。