匠の土づくり講座 23

14.11.26



連載23 「土壌診断⑤ 土のリン酸-可給態リン酸」



土壌診断結果の見方について、考えてみています。

では、耕種農家の方であれば、土壌診断結果を見ながら読んでいただきたいのですが、

可給態リン酸という項目が、土壌中にある「リン酸」がそれに当たります。


水田ではこの数値が多くても100グラム中に30ミリグラム程度。

畑であれば、同様に100ミリグラム、多いところでは200ミリグラムもの

リン酸がある圃場があります。

このように、リン酸が蓄積した圃場では、水に溶けてくるリン酸が

100グラム中に50ミリグラム内外が検出されます。

つまり、水に溶けてくるリン酸を作物は取り込んで、光合成や自分の体を

つくるために使うのです。

土壌の中にある水溶性のリン酸を化学肥料である過リン酸石灰が溶けている

と仮定し、計算してみると、深さ40センチメートルの土の中に約1トン

程度になるのです。


過リン酸石灰といえば、かなり金額のはる肥料です。そう感じたときに

初めて適正な量を知り、土壌診断が役に立ったと思える日が来るのです。


それから注意しなければならない、リン酸過剰です。


たとえば、トマト栽培で250ミリグラム以上ある圃場では、

下葉に苦土(マグネシウム)欠乏症が現れます。

同様に、リン酸過剰土壌では土壌のpHが低い、すなわち酸性土壌にも関わらず、

じゃがいもそうか病が激発することが最近の研究でわかってきました。


従来では、リン酸が悪影響を及ぼすことなど、考えにも及ばないほど、

日本の土壌にはリン酸が少ない状態でした。昭和初期から高度成長期を経て、

日本の土壌は大きく変わってしまっています。


次回の最終号では2年間の総まとめをしてきたいと思います。