農業技術の匠、鈴鹿ポートリー近藤社長の土づくり講座をお届けします。
匠の土づくり講座 3
13.03.19
連載 3「“土”の魅力」
三重県の村上先生の講演を拝聴していたときです。村上先生の師匠である東京農業大学の後藤先生は、
よくこのような話をされていたそうです。
「人に恥をかかせることを人の顔に「泥」を塗る、あるいは相撲で負けることを「土」が付くという
ように「土」が悪い意味に使われている一方で、「泥」付き野菜や「土」の香りがするね、
のように土が自然を代表する用語として使われることもあります。」と。
つまり、土は私たちの生活にとって非常に身近なものであるということなのでしょう。
私は、仕事柄直接土壌に触れることは、家庭菜園でつくっている野菜達と触れあう時ぐらいですが、
「土」の奥深さを感じている今日この頃です。
お米や野菜などの植物を育てるために必要なものは、温度・水・酸素(空気)それから養分であり、
土はいりません。教科書にはこのように記してあるのです。
四つの条件が整えられれば、土の役割は植物を支えるにすぎないからなのです。しかし、
このような考え方が実は間違った農業への始まりなのかもしれません。
土は植物の生育に不可欠な空気や水、それに栄養を蓄える力と、土に入った有機物を
分解する能力を持っていて、物質を循環させる役割も果たしています。
このような土が持つ優秀な能力を巧みに利用することこそが「土づくり」なのです。
次回からは、少し「土」について、掘り下げてお話していきたいと思います。
匠の土づくり講座 2
13.02.13
連載 2「土の色々(いろいろ)」
私は、よく東京に出張する際、新幹線の窓から土の色を眺めることにしています。
するとおもしろいことにある日気づいたのです。
名古屋から東京に近づくにつれて、土の色が濃くなっていくことに。
つまり、黒い土が増えていくのがよくわかります。
土の色には黒、褐、黄、赤、灰、青、白の他、これらを組み合わせた色など、
それぞれの圃場によって顔色が異なります。
皆さんも実感していることとは思いますが、水田や湿地のように水分が多くなると灰色がかります。
また、水はけの悪い水田を掘り起こすと下のほうからきれいな青い土がでてくることがあります。
この青色は、酸素が少ない環境では安定した「鉄」の色だそうで、
堀上げて空気にさらすと褐色に変わってしまうのです。魔法のようですね。
関東の北のほうには、赤玉土などと呼ばれる赤い色をした土があります。
これは酸化鉄(さんかてつ)が主成分なので、レンガのような色をしています。
日本を代表する「黒い土」は肥えている(肥沃なので)から良い土だと考える人
も少なくありません。
しかし、それは間違った知識で黒い色の正体は、腐植(ふしょく)と呼ばれる土の中
の有機物であり、腐植が多くなるほど黒くなるようです。
この辺は、専門家ではないので、詳しいことはわかりませんが、いずれにしても、
さまざまな土の顔色は、主に腐植と鉄化合物の組み合わせによって決まっているのです。
色だけ見ても、土というものは色々(いろいろ)なものがあるようです。
詳しくは、農業環境技術研究所 土壌情報閲覧システムにて、農耕地土壌図と
土壌の種類毎の性質、作土層の理化学性を調べる事が出来ます
http://www.niaes.affrc.go.jp/techdoc/press/100413/press100413.html
鈴鹿ポートリーの近藤です。
私は、採卵を業として営んでいるのですが、採卵の結果発生する副産物の有効利用にも積極的に取り組んできました。その中で農業の基盤である「土壌」の大切さや、「土壌」の奥深さも実感しています。
このたび、中部エコテックの川崎社長から、畜産の立場から「土壌」について話しをして欲しいとの依頼を受け、慣れない筆を進めてみました。
科学的な知見に基づかない部分もでてきますが、ご容赦いただき、何かの参考にしていただければ幸いです。これから、2年間、よろしくお願い致します。
農業技術の匠
近藤 博信
「百姓の腕」。栽培技術を身につけることができれば、大抵の作物は作れるはずだ!誰もがそう信じて疑いません。
しかし、長年耕種農家の方々とのお付き合いの中で、私は、一部の養液栽培を除き、農業の基盤は「土づくり」ではないかと考えるようになってきました。すなわち、どんな良い肥料や良い種子があっても、土壌そのものが良くなければ、おいしい米や野菜を作ることは決してできないのではないかと考えています。
では、いったい「土づくり」とはいかなるものなのでしょうか。
肥料や堆肥や土壌改良資材、最近では微生物資材を沢山撒くことが「土づくり」だと考えている方も少なくありません。一般的にはできる限り堆肥を沢山撒くことが「土づくり」と思われています。堆肥などの有機物を沢山撒くと、土壌の中にリン酸やカリウム(加里)が溜まって、土壌のバランスが崩れてしまうのです。堆肥には、窒素やリン酸やカリウム、その他の肥料成分が含まれていることを忘れてはいませんか。昔のような土壌が痩せている時代は良かったのでしょうが、現代農業においては、もはやこの定説は通用しません。
正しい「土づくり」のために必要な「土の」知識について理解を深めていただき、今後実行すべき「将来農業」とは何かを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。